資金調達 ーデットファイナンスー

 こんにちは。

 大阪事業承継パートナーズ コンサルタントの岡本です。

 

 先日の記事では、資金調達の手段の1つであるエクイティファイナンス・新株発行についてお話しさせて頂きました。

 

 第2回目の本日はデットファイナンスより「社債発行」を取り上げたいと思います。

 まずは、資金調達の概要と種類のおさらいから。

 

【資金調達の概要】

 エクイティファイナンスとは、募集株式の発行などにより資金調達される株式資本のことで、「株式」を意味します。株式の発行(増資)を対価に出資金を受け取りますので、出資金の返済義務はありません。

 デットファイナンスとは、銀行借入や社債発行などにより資金調達される他人資本のことで、「負債や借金」を意味します。「負債や借金」ですので、返済義務、返済期限があります。

 エクイティファイナンスとデットファイナンスの大きな違いは、返済義務があるか、ないかです。

 貸借対照表では、エクイティファイナンスは純資産の部、デットファイナンスは負債の部に入ります。

 

【資金調達の種類】

エクイティファイナンス

・新株発行

・自己株式を売却

 

デットファイナンス

・社債発行

・銀行借入

・個人借入

・補助金や助成金(一部返済が必要)

等。

 

 では、本日の本題、デットファイナンスの社債発行についてみていきましょう。

 

 

【デットファイナンス・社債発行】

①社債とは

 社債とは会社が資金調達を目的として、投資家からの金銭の払込みと引き替えに発行する債券のことです。

 発行の前に、利息、返済期限等の募集要項を決めます。

 社債を発行した会社は購入した人に利息を払い、満期になったら社債の額面金額は一般的に一括償還することとなります。

 要は会社の借金ということですので、貸借対照表では負債の部にはいります。

※償還:金融・証券用語。債券や投資信託が満期を迎え、投資家にお金を返還すること。

 

②種類

 社債には4つの方法があります。これは社債の発行対象の違いによって分けられています。

「誰に対して募集をかけるのか」ということです。

 

 a.公募債

市場を通して不特定多数の投資家に広く募集をかける社債のこと。主に大企業が活用する方法。

 

 b.私募債(特定投資家向け私募債)

特定の少数の投資家を対象として募集される社債のこと。

 

 b1.プロ私募債(適格機関投資家向け私募債)

適格機関投資家(銀行など)のみを対象として募集される社債のこと。

※適格機関投資家とは、「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者」のことです。(金融商品取引法第2条3項1号)適格機関投資家には、銀行等の金融機関(証券会社や保険会社など)、協同組織金融機関、投資会社等が存在し、金融庁のウェブサイトでリストが公表されています。

 

 b2.少人数私募債

会社と関わりのある取引先や知人等の特定の縁故者を対象に、社債購入者の募集を49人以下に制限した社債のこと。主に中小企業の活用が多い。

 

③中小企業で少人数私募債が活用しやすい理由

 社債は、原則、元本の返済を返済期日まで行わないので、会社にとっては資金繰りがしやすいと考えられます。そのなかでも、私募債は、返済期間や利息を社債発行会社が柔軟に決められ、公募債より発行手続きが簡易でコストも低く抑えられるという利点があります。

 では、どうしてプロ私募債ではなく、少人数私募債が中小企業で活用されやすいのでしょうか。

 それは、プロ私募債は発行審査基準が厳しいこと、少人数私募債よりコストが高いことが挙げられます。

 

・発行審査基準が厳しい

 プロ私募債では、適格機関投資家のみを対象に社債を募集します。適格機関投資家が社債を引き受けるとなると、企業の純資産額や自己資本比率などの適債基準を満たしているか、を厳しく確認されます。企業の財政状況が悪い場合は、適債基準をクリアできず、プロ私募債での発行はできなくなります。

 その点、少人数私募債では、審査基準はありません。

 

・コスト面

 プロ私募債は、社債発行にかかる事務手続きを代行してもらえるメリットはありますが、それに伴う様々な手数料がかかり、コストが上がります。

 一方、少人数私募債は、社債の管理を自社で行います。手間はかかりますが、コストは抑えられます。

 

 

④社債発行にあたっての留意点

・事務作業の増加

 社債を発行した際には、社債原簿を作成し、利息の支払いや償還の期限等、社債を厳格に管理しなければなりません。

 私募債は原則、社債管理者の設置の義務はありませんが、社債発行会社が自ら社債管理を行うことにより、事務作業が増加します。

 

・一括償還が必要

 一般的に、社債は満期を迎えた際に、額面金額を一括償還しなくてはなりません。返済期限までに償還資金の準備が必要です。

 

・償還条件の変更ができない

 銀行等の融資であれば、業績悪化の際に返済条件の変更を依頼することも可能かと思いますが、社債は、発行時点で決めた条件を変更することはできません。

 万が一、償還できない場合は、借り換えや増資等の検討が必要となりますが、その場合、会社の信用は低下し、融資の金利が上昇することが考えられます。

 

 社債発行の際には、長期的な資金計画を立て、資金繰りを管理する必要があります。

 

※勘違いしそうな留意点の1つが、「少人数私募債」の人数です。

 少人数私募債は、社債購入者の募集を49人以下に制限した社債です。

 社債購入者が49人以下ではなく、募集・勧誘する人数(声かけベースであっても)が49人以下でないといけません。

 たとえ、実際の出資が1人でも、取得勧誘を行う相手の人数が49人以下でないといけないということです。

 

 

 社債の種類により、それぞれ細かい要件があり、留意点も様々です。出資法や金融商品取引法、特定商取引法などが絡み、予期せぬところで違法になる可能性もあります。

 社債発行をお考えの方は、弁護士等、専門家へのご相談をお勧めいたします。

 

【まとめ】

 会社における資金調達の手段を、2回に渡ってお話ししてきました。

 資金調達には複数選択肢があります。どの資金調達の方法がいいのかは、必要とする資金額や会社の規模、会社の状況によって様々です。また、新株発行や社債発行には、法律で定められたルールがあり、遵守する必要があります。

 それらを知らずに行った場合でも、発行の無効や最悪のケースでは罰則が課せられることもあります。

 会社が自社に合った資金調達を行い、会社の成長に繋がるよう、専門家に相談することをお勧めいたします。

 

 

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