事業承継税制の認定、その後

 こんにちは。

 大阪事業承継パートナーズ コンサルタントの岡本です。

 

 先日は、事業承継税制を活用するための認定までの流れをお話しさせて頂きました。こちら。

 

 事業承継税制とは、適用されると、事業承継に伴う後継者の贈与税、相続税の納税が猶予される制度です。

 これは後継者の税負担を軽減し、承継が円滑に進むことを目的として策定されており、会社や後継者にとって大変魅力的な制度となります。

 しかし、事業承継税制は認定を受けた後、一定の要件を守らなければ猶予納税額の全額、または一部を利子税と共に納税しなくてはなりません。その反面、猶予納税額が免除される場合もあります。

 

 本日は、どのような時に認定から外れ、猶予納税の納税義務が生じるのか、また、猶予納税額が免除される場合について簡単にお伝えしていこうと思います。

 こちらに記載しているものは、要件の一部となります。記載以外にも細かな要件がありますので、事業承継税制の活用をお考えの方は税理士や弁護士等の専門家へご相談されることをお勧めいたします。

 大阪事業承継パートナーズでもご相談を受け付けておりますのでお気軽にご相談下さい。

 

※事業承継税制は法人だけではなく、個人事業主も活用が可能ですが、ここでは法人に絞ってお伝えしていきます。また、一般措置と特例措置があり、それぞれ要件に違いがありますが、こちらの記事では特例措置について記載いたします。

 

 

【はじめに】

 事業承継税制が適用されても、贈与税・相続税の納税義務がなくなるわけではありません。

 あくまで、納税猶予を受けられた、ということです。

 

納税猶予:納税を遅らせる猶予をもらうこと。時期が来たら税金の支払いが必要。

納税免除:納税をしなくてよいこと。税金は0円になり、支払いは不要。

 納税猶予と納税免除は最終的に税金の支払いが必要か不要か、という大きな違いがあります。

 

 では、事業承継税制の認定を受けた後、納税義務が生じるのはどのような時なのか、から見ていきましょう。

 

 

【猶予納税額の納税義務発生】

 事業承継税制の認定後、5年間守るべき要件と、5年経過後も継続して守るべき要件があります。

 以下の要件を1つでも満たせなくなった場合、猶予納税額の納税義務が生じます。

 

◇認定後に5年間守るべき要件

・会社を解散させないこと

・後継者が制度対象の株式等を一株も手放さず、保有し続けること

・後継者が代表権を有していること

・同族で過半数の議決権を有し、後継者が筆頭株主であること

・⻩金株を後継者以外の者が保有しないこと

・先代経営者が再び会社の代表者にならないこと(贈与の場合)

・雇用の平均8割維持を満たせなかった際、都道府県庁に報告を行なうこと

※特例措置では平均8割維持を満たせない場合でも直ぐに猶予が打ち切られ、納税とはなりません。しかし、認定経営革新等支援機関の所見を記載し、都道府県庁に報告を行わなかった場合は全額納税となります。

・上場会社、風俗営業会社、資産保有型会社、資産運用型会社に該当しないこと

・都道府県庁と税務署への届出を継続していること※後ほど記述

 

 5年間はしっかりと後継者が筆頭株主として、承継会社を経営していくことが求められます。

 

◇5年経過後も継続して守るべき要件

・会社を解散させないこと

・後継者が制度対象の株式等を全部譲渡、贈与しないこと

・資産保有型会社、資産運用型会社に該当しないこと

 

 M&A等で会社の株式等を譲渡する場合は、たとえ5年経過後でも猶予は打ち切られます。その際、猶予されている贈与税・相続税に利子税を合わせて納税することになります。

 

 資産保有型会社、資産運用型会社についてはこちらの記事をどうぞ。

 

 

 では次に、納税が免除となるのはどのような時でしょうか。

 

 

【猶予納税額が免除になる時】

◇認定後5年以内

・先代経営者の死亡時(贈与の場合)※相続税の課税対象となる

・後継者の死亡時

 

◇認定後5年経過後

・会社の倒産時

・次の後継者へ事業承継税制を活用し事業承継した時

 

 ※贈与で事業承継税制の認定を受けると、先代経営者の死亡が5年以内であっても、猶予されていた贈与税は免除されます。

 しかし、贈与を受けた株式等を贈与者から相続、遺贈により取得したものとみなされ、相続税が課税されます(贈与時の価額で計算されます)。その場合は、都道府県知事の確認を受けることで、改めて、相続税の納税猶予を受けることができます。

 贈与税の猶予から相続税の猶予へ切り替えなければなりません。

 

 免除される要件は不測の事態か、次の世代交代の時です。

 

 また、認定後、都道府県庁と税務署への届出が必要です。

 提出を忘れたときも納税猶予は打ち切りとなり、税金を納めなければなりませんので注意が必要です。

 

 

【提出書類】

◇申告期限後、5年間、毎年提出

 都道府県庁→「年次報告書」

 税務署→「継続届出書」

 

◇6年目以降、3年に1回提出

 税務署→「継続届出」

 

申告期限とは、

贈与:贈与を受けた年の翌年の2月1日から、3月15日まで。

相続:被相続人が死亡したと知った日から10ヶ月以内。

 

 

 

【まとめ】

 事業承継税制は、非上場の中小企業の税負担を軽減し、将来に渡り承継していくために策定された制度です。承継が円滑に進み、経営が継続されていれば、いずれは納税免除となります。

 また、次の後継者へも事業承継税制が適用されれば、納税は猶予され続けますので、実質的に納税が0円となるわけです。

 

 事業承継税制を活用するためには、まず、認定の要件に該当し、適応後も猶予され続けるための要件を満たす必要があります。

 長期に渡る制度ですので、専門家と共にしっかりと準備をし、計画を立てて、提出書類も忘れることなく届け出ることが必須です。

 決してハードルが低くはない事業承継税制ですが、会社によってはメリットが大きいものです。まずは、自社が活用できるかどうかシュミレーションを行いましょう。

 

 大阪事業承継パートナーズでは、事業承継・M&Aのご相談だけでなく、企業に関わるあらゆる悩みを専門家と共に整理し、解決策をねり「全体最適」を目指します。

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