遺言について①遺言書の種類
こんにちは。
大阪事業承継パートナーズ コンサルタントの岡本です。
前回、「事業承継における遺言書作成の必要性」について記事にさせて頂きました。
経営者の皆様においては、遺言書を作成することは、後継者や親族はじめ、従業員にとっても、不必要なトラブルを回避し、良好な関係を築いていくことに繋がり、そしてそれが、会社の存続、発展に不可欠です、というお話をさせて頂きました。
皆様に遺言書の作成を推奨させていただいたので、次は、2回に渡って、①遺言書の種類や②それぞれの特徴などをお話しさせて頂こうと思います。
よろしくお願いいたします。
本日は、①遺言書の種類についてご説明させていただきます。
【はじめに】
遺言書は、法律で定められた方式で作成しなければ、法的な効果は生じません。また、単に口頭で相続の希望を述べたり、紙に書いておいたりしただけでは遺言としての効力はないのです。
法律で定められた遺言の作成方式に従って遺言をしてこそ、法律上の遺言書としての効力を生じさせることができます。
【遺言書作成の方式】
遺言書作成の方式には大きく分けて2種類あり、「普通方式遺言」と「特別方式遺言」に分かれます。
「特別方式遺言」とは、通常の遺言書を作成する余裕がない時に利用します。たとえば、病気やケガで突然死期が迫った時などです。
一般的に「遺言」といわれるものは「普通方式遺言」になります。
事業承継の為に前もって準備をするのでしたら「普通方式遺言」になりますので、今回は「普通方式遺言」に絞り、お話をしていこうと思います。
【普通方式遺言とは】
普通方式遺言は、一般に利用される遺言の作成形式のことです。
①「自筆証書遺言」(民法第968条)
②「公正証書遺言」(民法第969条)
③「秘密証書遺言」(民法第970条)
の3つの種類があります。
【3つの種類】
①「自筆証書遺言」
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書本文を自ら書き、作成する遺言書のことです。
相続開始後に家庭裁判所での検認は必要となりますが、公証人や証人の立ち合いはいりませんので、費用がかかりません。
筆記用具や紙の指定もありません。指定がないのですから、鉛筆でも有効です。しかし、鉛筆はペンより薄く、時間が経つと消えやすくなり、文字が読み取れず無効になるリスクがあります。また消しゴムで消して書き直されるという危険性も含んでいるので、お勧めしません。
長い月日が経っても、遺言者の気持ちが相続人に伝わるよう、きちんとした紙とペンで残したいものです。
一人で作成できるため、最も多く利用されている遺言書の作成方式です。
本文は自筆であることが必須ですが、財産目録の部分はパソコンでも作成可能です。
※詳しい書き方はこちらから
②「公正証書遺言」
公正証書遺言とは、公証人に作成してもらう遺言書のことです。公証人が関与して作成する遺言書なので、自身の誤った法的解釈によるミスが起こらないため、確実性が高い形式といえます。
作成にあたっては、2人以上の証人の立会いの元、遺言者が公証人に遺言を口頭で伝え、公証人はそれを筆記し、その筆記したものを遺言者と証人に読み聞かせるか、閲覧させます。そして、遺言者と証人がその正確性を承認した後に、署名・押印し、公証人が方式に従って作成したものであることを付記して、署名・押印して作成されます。
ここでいう証人ですが、誰でも良いとは限りません。
■証人になれない人
・未成年者
・想定される相続人、受遺者(遺言により財産を受け取る人)、これらの配偶者及び直系血族
利害関係にある人は証人にはなれません。
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
公証人の不正を防ぐために、公証人と関係がある人も証人にはなれません。
では、誰に依頼したら良いかということですが、
信頼できる知人が身近にいる方は、その方にお願いすることが良いでしょう。その場合は、遺言の内容を知られてもよい人で、かつ秘密を守れる人になります。
身近にそのような方がいない場合は、費用はかかりますが、行政書士や司法書士、弁護士に依頼するか、公証人に紹介してもらう等があります。
自筆証書遺言よりもハードルが上がりましたが、遺言書が無効になりにくく、トラブルの心配も最小限に抑えられます。
※公証人とは:原則として、裁判官や検察官あるいは弁護士として法律実務に携わった者で、公募に応じたものの中から、法務大臣が任命する人のことです。国家公務員法上の公務員ではありませんが、国の公務である公証作用を担う実質的な公務員で、全国に約300箇所ある公証役場で執務しています。
大阪府の公証役場はこちらから
③「秘密証書遺言」
秘密証書遺言とは、内容を秘密にしたまま、遺言書の存在だけを公証役場で認証してもらえる遺言書のことです。遺言の内容は遺言者以外だれにも知られることなく、遺言書があるという事実だけを確実にするのが目的になります。
作成にあたっては、遺言者が遺言書に署名・押印し、それを封じ、遺言書に押したものと同じ印章で押印して封印します。その封書を公証人と2人以上の証人の前に提出。自分の遺言書であること等を申述し、公証人が遺言書提出日と申述内容を封書に記載して、遺言者・公証人・証人が署名・押印して作成されます。
遺言の内容を、相続開始後に検認するまで秘密にできるので、秘密保持の観点からは一見、良さそうには見えますが、公正証書遺言と同様の手間がかかる割には、自筆証書遺言と同様なデメリットがあるため、実際にはほとんど利用されていないのが現状です。
【まとめ】
遺言書と一括りにいっても、いくつも種類がありますね。
遺言者の立場や状況により、どれを選択すれば良いかは様々でしょう。
遺言書は法的な効力を有しますが、間違った形式であったり、署名や押印のミス等があった場合は、せっかく作成した遺言書が無効になってしまいます。また、誰に何を相続させたいのか明確に記載し、第三者がそれを特定できるようにしなければなりません。
遺言書の種類や作成方法で悩まれた際には、弁護士に相談するとよいでしょう。
大阪事業承継パートナーズでは、事業承継・M&Aの相談だけでなく、遺言書による様々な悩みにも、代表である、弁護士瀧井が誠実にお答えさせて頂きます。
小さなことでも構いません。ご質問や不安をお持ちの方は、お気軽にご連絡下さい。
お問い合わせはこちらから
関連する記事