事業承継の手法の種類
こんにちは。
大阪事業承継パートナーズ コンサルタントの岡本です。
先日の記事「事業承継のフローチャート」にて事業承継の選択肢のお話しさせて頂きました。
チャート表の中の「相続・贈与」「内部昇格・MBO」「M&A」「廃業」と4つ選択肢に下線が引いてあったと思います。
本日はこの4つの選択肢の、債務面とその手法について簡単に記事にしたいと思っております。
記載している手法は大きくカテゴリー分けしたものになりますので、その手法の中にもまた種類があるものも存在します。どの手法を活用するのか、又は併用するのか、といったことは会社の状態や事情により様々です。
記載の手法はあくまで一例としてお読みください。
《財務面・手法》
1:相続(親族)・贈与
【手法】
■事業承継計画を立て10年ほどかけて承継するのが理想。
会社の企業価値によりますが、企業価値(株式の際は株価)が高額になる場合は納税負担が大きくなるため、準備が必要です。
早めの事業承継の準備に着手することにより、以下のメリットがあるでしょう。
・「全体最適」や現経営者の最善策を検討する時間がある。
・後継者の納税負担を回避しながら、株を移転できる。(贈与税対策や株価予測等)→様々な税制を活用するにあたって、今は要件に当てはまらなくとも、当てはまるよう準備を整えることにより、活用できる可能性が広がる。(事業承継税制等)
・従業員への精神的ケアに時間をかけられる。
・金融機関へのアピールの時間が増え、後継者を金融機関に時間をかけて紹介できることで信頼度を高めることができる。
・経営者交代への取引先の不安を信頼に変える時間がある。
2:内部昇格・MBO(従業員承継)
【手法】
(主に後継者に株を集約させることについて記載)
■従業員(後継者)を役員に昇格させ、役員報酬で株式の取得資金を作る。
■後継者が株式を買取りやすいよう、株価を下げる。※こちらの記事もどうぞ
・役員報酬を引き上げる
・退職金を支給する
・株式配当金を低く設定する(類似業種比凖価額の計算方法において、1株あたりの年配当金が関係してきます。これが高額設定になっていると配当比準値が上がるため、1株の株価が上がってしまいます。)
・純資産の売却(資産である土地や建物、機械等)※類似業種比凖価額には影響しませんが、純資産価額が下がることになります。
非上場の中小企業の株価算定には類似業種比凖価額と純資産価額を併用して計算されますので、そのどちらの評価額をも引き下げることで株価が下がり得ます。
・会社として生命保険に加入する等
■投資ファンドを活用する。
■金融機関の融資を活用する。
3:M&A(第三者承継)
【手法】
ー法人の場合ー
■買収(株式譲渡)
売り手の保有株式を買い手側に譲渡することです。買い手側が過半数の株式を保有することにより、売り手から買い手に経営権が移転しますが売り手の法人格は消滅しません。
株主が入れ替わるだけで、売り手側の会社の権利や義務を包括的に承継しますので、資産、債務、従業員、契約関係もそのまま買い手側が引き継ぎます。
■買収(事業譲渡)
売り手の保有している事業の一部(一部譲渡)または全部(全部譲渡)を買い手に譲渡することです。
買い手側は契約次第では、欲しい事業を選択し、資産、債務についても個別に指定して引き継ぐことが可能です。
事業譲渡のおける「事業」とは、会社が営業目的のために所有している財産のことを指します。会社設備や不動産、債務、従業員、ノウハウなど、有形財産も無形財産も含みます。
ですので、極端な話にはなりますが、売り手の会社から従業員だけを譲渡して欲しい、という契約も可能なのです。その場合、従業員は務める会社が変わりますので、買い手側は従業員と個別に契約をまきなおす必要があります。
買い手側が許認可の必要となる事業を買収した場合は、原則、許認可を取り直すこととなります。
■合併:複数の会社を1つの法人に統合すること。
(吸収される側のすべての権利や義務を、一つの企業に承継させる方法)
買収とは違い、売り手側の法人格は完全に消滅します。従業員や取引先と再度契約を結ぶ必要があります。
■会社分割:会社から一部の事業を切り分けて、他社に承継させること。
権利・義務を包括的に承継します。ここが個別的に承継する事業譲渡とは大きく異なる点です。
売り手側の経営権はそのまま継続することが多く、会社分割後、1つの事業を後継者に任せ、プレ事業承継を行う場合にも良い手法の1つです。
簿外債務(未払いの残業代やリース債務等)や偶発債務(第三者に対する債務保証や損害賠償責任)を見極めることも重要です。
許認可が必要となる事業の場合は、そのまま承継できないケースがあるので注意が必要です。
ー個人事業主の場合ー
■事業譲渡
一部譲渡か全部譲渡のどちらかを選択。
4:廃業
【手法】
ー法人の場合ー
■解散の手続きが必要
株主総会を開き、特別決議を行います。その後、業務を停止し、解散となってもこれで終了とはなりません。会社が所有する資産や負債を処分するために法的な手続きを行う必要があります。これを清算手続きといいます。
清算手続きを完了させるまで法人は存在することになり、完了させたのち、法人として消滅します。
ー個人事業主の場合ー
■廃業届・事業廃止の届出・青色申告停止の届出などを提出で完了。
※法人の場合も個人の場合も債務超過であれば、「破産」も視野に入れることとなります。また、専門家に依頼する場合は、そのコストもかかります。
ちなみに余談ですが、「倒産」と「破産」は異なるもの、ということはご存知ですか。「倒産」は法律上統一的な定義はなく、正式な法律用語ではないのです。
「倒産」の中には「民事再生」や「会社更生」などがあり、「倒産」というカテゴリーの中に「破産」があるのです。倒産法という法律はないですが、(講学上では使われています)破産法や民事再生法という法律はあります。
《まとめ》
事業承継の選択肢も様々ですが、手法においてもそれぞれ多くの選択肢が存在します。どの手法が良いのかは、会社によって異なります。
しかし、どの選択肢を選んだとしても、全てに共通していえることは、事業承継計画を早めに立てておくことが会社の明るい未来を実現できる、ということです。
時間に余裕があれば、路線変更も可能ですし、じっくりと計画を練ることで、結果、後継者や従業員、会社を守ることに繋がります。まだまだ先のこと、と思われている経営者の皆様にも是非一度、会社の未来を考える時間を作って頂きたいと思っております。
複数選択肢の候補があっても良いと思います。複数あることはとても素敵なことです。
ケースバイケースで今何をしておいたらよいのか、を知ることが大切だと思っています。
大阪事業承継パートナーズでは、会社の未来の発展・成長の道筋を考えるお手伝いをしております。経営者様のお気持ちを是非お聞かせください。事業承継やM&Aに関係のないお悩みでも構いません。
会社に関わるあらゆる悩みを専門家と共に整理し、解決策をねり「全体最適」を目指すことをモットーにしております。
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