「経営者保証に関するガイドライン」について
こんにちは。
大阪事業承継パートナーズ コンサルタントの岡本です。
本日は、中小企業の経営者の皆様に知っておいて頂きたいガイドラインについてお話していこうと思います。
それは、「経営者保証に関するガイドライン」です。
このガイドラインは2013年12月5日に公表され、2014年2月1日から適用されているのですが、ご存じのない方も多いかもしれません。
「経営者保証に関するガイドライン」は本体と特則にわかれており、特則は事業承継に焦点をあてたものになります。
今回お話しするのは、いずれの経営者の方も対象となり得る、本体についてです。特則はまた別の記事でご紹介させて頂く予定です。
【はじめに】
中小企業の経営者が金融機関に融資の相談をした際、経営者保証を求められた、という経験をした方は多いかと思います。
実際に経営者保証がある融資を受けている経営者の方が多いのが現状でしょう。
経営者保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となること(保証債務を負うこと)で、会社が倒産や廃業して融資の返済ができなくなった場合や、金融機関から融資の返済を迫られ資金がない場合は、経営者個人が会社に代わって返済すること(保証債務の履行)です。
経営者保証がある融資を受けた経営者は、大きなリスクを抱えることになります。
株式上場のような方法で資金調達ができない中小企業は、金融機関からの融資が企業成長の行方を大きく左右します。
しかし、中小企業が新たな事業展開を行おうと、金融機関に融資の相談に向かった際、当たり前のように経営者保証を求められると、経営者は躊躇し、業績拡大のチャンスを逃してしまうでしょう。
そのような弊害を阻止するため、「経営者保証に関するガイドライン」には、金融機関と中小企業、経営者が共に努める自主的なルールが策定されています。
経営者保証は一般的に「個人保証」と呼ばれていますので、後者の方が馴染みが深いと思いますが、ここでは経営者保証で統一してお話しいたします。
【策定された背景】
「経営者保証に関するガイドライン」が策定された背景には、先ほども触れたような、中小企業の事業拡大や成長、また思い切りの良い事業展開を経営者保証の弊害を解消しながら後押しするために設けられました。
日本における法人の大多数は中小企業です。経営者保証があることで中小企業の成長を妨げることになっては、社会全体のためにも望ましくありません。
中小企業の活力が一層引き出されることにより、日本経済を活性化させることを目的として策定されました。
また、業績不振に陥った場合、経営者保証があることで早期処理を断念することがないよう、保証債務の整理についてもガイドラインで策定されています。経営者保証に依存しない融資の一層の促進を図る意図もあります。
【経営者保証に関するガイドラインとは】
ーー「中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール」と位置付けられており、法的な拘束力はないが、関係者が自発的に尊重し、遵守することが期待されている。経営者保証を解除するかどうかの最終的な判断は、金融機関にゆだねられる。ーー※中小企業庁より
「経営者保証に関するガイドライン」には、金融機関と中小企業、経営者が共に努める自主的なルールが策定されています。中小企業への融資のあり方、既存の保証契約の適切な見直し、事業承継時の対応、保証債務の整理等の指針です。
法的な拘束力はありませんが、中小企業融資において、経営者保証が抱える問題点を克服することを目的とした基本方針となります。
「経営者保証に関するガイドライン」を適用できれば、経営者保証不要で金融機関から新規の融資を受けることができたり、既存の経営者保証の解除や、債務整理する際に経営者の負担が軽減される等のメリットがあります。
メリットの詳細は後に記載。
【対象者】
主たる対象は中小企業・小規模事業者、個人事業主も対象に含まれます。
反社会的勢力ではなく、そのおそれもないことが必須です。
経営者以外にも
・実質的な経営権を有している者
・営業許可名義人
・経営者と共に事業に従事する当該経営者の配偶者
・経営者の健康上の理由のため保証人となる事業承継予定者等
も対象となります。
【活用を検討することが望ましい方】
ー新規借入時、既存借入の借換時等
新規に借入を行う際や既存の借入について経営者保証を外したい人
ー事業承継時
事業承継を行う際に経営者保証が障害となっている人
ー保証債務履行時
保証債務の整理を経営者保証ガイドラインに基づいて行いたい人
事業再生や債務整理をしたいが、経営者保証があるため踏み切れない人
【経営者保証ガイドラインの3要件】
以下の3要件を将来に亘って充足する体制が整備されていることが必要となります。
①資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されていること
簡単に言えば、会社のお金と、個人のお金を、混ぜこぜにしていないこと、です。
また、法人と経営者との間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えないことも必要となります。これは役員報酬・配当やオーナーへの貸付等が非常識にならないよう、社内監査体制の確立等が整備されていることが求められます。
②財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能であること
会社がしっかりと収益を上げており、それにより計画的な返済が可能であることが求められます。
③金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されていること
財務状況を正確に把握し、必要に応じて情報開示がされる、透明性のある経営が求められます。
【経営者保証ガイドライン適用のメリット】
大きなメリットとして3つ挙げておきます。
①経営者は経営者保証なしで、金融機関から新規融資を受けられる可能性
②既存の経営者保証を見直すことができる可能性(特に事業承継時に有効※事業承継においては特則あり)
③保証履行後、経営者の負担を軽減してもらえる可能性
①経営者は経営者保証なしで、金融機関から新規融資を受けられる可能性
事業拡大や新しい事業展開のため、会社が金融機関に新規融資を要請する際、先ほどの3要件を満たしていると判断された場合には、経営者保証なしで融資を受けられる可能性があります。
業績が優れている会社でも、経営者保証のリスクの大きさから新規融資を断念し、チャンスを逃してしまうこともあるでしょう。そのようなことがないよう、金融機関にもガイドラインの自主的な遵守が求められています。
②既存の経営者保証を見直すことができる可能性(特に事業承継時に有効※事業承継においては特則あり)
既存融資を見直し、経営者保証の解除が可能になる場合があります。
既存融資の見直しは、経営者の負担軽減に繋がるだけでなく、事業承継の場面で効果的となります。
一般的に経営者が交代する際は、既存融資について経営者保証があると、後継者がこの経営者保証を承継しなければなりません。そのことが後継者の足かせとなり、事業承継がスムーズに進まないケースがあるからです。
また、M&Aの際にも、経営者保証があることで売却価格が大幅に下げられたり、買い手側が難色を示し、M&Aの話自体が流れてしまうおそれもあります。
事業承継・M&Aどちらにおいても、経営者保証の解除が実現されることは大変有益となり得ます。
③保証履行後、経営者の負担を軽減してもらえる可能性
経営者保証のある融資を受けていることは、事業に行き詰まり会社の負債を整理することになった場合、経営者の生活基盤を失うことに直結してしまうことが多くあります。
そのため経営者は、早期の対応が遅れ、無理な自力再建をしようと状況をさらに悪化させてしまうケースが見られます。
このような、経営者の負担を軽減するため、経営者保証ガイドラインを適用することで、金融機関に対して以下の対応を求めることができます。
ー保証履行後も保証人の手元に残る資産等ー
●破産時の自由財産(99万円)は、原則として経営者の手元に残る
●金融機関は、経営者の破産時も事業再生等の早期着手により法人からの回収見込額が増加した場合、自由財産に加えて「一定期間の生活費(雇用保険の考え方を参考に、年齢等に応じて約100万円~360万円)」を経営者に残すことを検討
●金融機関は、「華美でない自宅」について、経営者の収入に見合った分割弁済をする等により、経営者が自宅に住み続けられるよう検討
●経営者が引き続き事業の指揮を執ることも認める
●保証債務履行時点の資産で返済し切れない保証債務の残額は、原則として免除する
※中小企業庁より
また、保証履行後の保証人情報について、保証人が債務整理を行った事実、その他の債務整理に関連する情報は、信用情報登録機関に報告・登録されないという措置も取られます。
経営者にとっては、当面の生活資金や自宅の確保、再チャレンジや事業継続の支援を得られることは、大きなメリットでしょう。
【まとめ】
「経営者保証に関するガイドライン」は経営者の経済的、精神的負担を軽減するためだけでなく、クリーンで安定した経営を目標に自社を見直すきっかけでもあると思います。それにより、中小企業が発展し企業成長できれば、日本経済にとっても利益となります。
地域経済の発展と雇用を守ることは、中小企業経営者の皆様にしかできない社会貢献でもあるでしょう。
金融機関に「経営者保証に関するガイドライン」の遵守を求めることは、ハードルが高いと思われがちですが、国が後押ししている政策になります。是非、取引のある金融機関に相談してみて下さい。
大阪事業承継パートナーズでも「経営者保証に関するガイドライン」について支援させて頂いております。適材適所なメンバーでチームを組み、ヒアリングから計画を立て、必要であれば金融機関への同行も可能です。
経営者の皆様と伴走し応援させて頂きます。
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