「経営者保証に関するガイドライン」の特則とは

 こんにちは。

 大阪事業承継パートナーズ コンサルタントの岡本です。

 

 本日は先日の記事の中で出てきた「経営者保証に関するガイドライン」の特則についてお話していこうと思っています。

 特則は、事業承継に焦点をあてたガイドラインになっており、事業承継時に後継者が懸念する、前経営者の経営者保証や自身の経営者保証の取り扱い等について、後継者の負担を軽減し、事業承継を円滑に行うための施策が明記してあります。

 事業承継を検討中の方だけでなく、まだまだ事業承継は考えられないが、経営者保証のある融資を受けている方は是非、目を通して頂きたい記事となっております。

 

 

【「経営者保証に関するガイドライン」の特則とは】

 本体である「経営者保証に関するガイドライン」を補完しつつ、事業承継時において、中小企業、経営者、金融機関等に期待される経営者保証の具体的な取扱いを定めているガイドラインです。

 特則は「経営者保証に関するガイドライン」本体と同様、中小企業の活力が一層引き出されることにより、日本経済を活性化させることを目的としていますが、現経営者の経営者保証解除や、現経営者と後継者の双方から二重に保証(二重徴求)を求めないことなど、事業承継時に弊害となり得る事例に対して、事業承継の促進に資する解決を促すガイドラインとなっていることが特徴です。

 法的拘束力はありませんが、金融機関と中小企業、経営者が共に遵守に努める自主的なルールであることは本体と同様です。

 このガイドラインにより、経営者保証に依存しない融資の一層の実現に向けた取組みが進むことで、円滑な事業承継が行われることが期待されています。

 

 

 

【策定された背景】

 近年の中小企業の状況をみると、経営者の高齢化が一段と進むとともに、休廃業や解散件数が増加傾向にあります。

 さらに後継者未定の企業も多数存在するのが現状です。

 このまま後継者不在により、事業承継を断念し、廃業企業の増加が一段と加速すれば、地域経済の発展に支障をきたし、日本経済が衰退してしまうことが懸念されています。

 事業承継が円滑に進まない1つの要因として、経営者保証が後継者の足枷となっていることが挙げられることから、それらの事業承継の弊害を軽減し、中小企業が継続して地域社会に貢献できるようガイドラインが策定されました。

 

では、中身を見ていきましょう。

 

 

【「経営者保証に関するガイドライン」特則で金融機関に求められる対応】

 

原則として前経営者、後継者の双方から二重には保証を求めないこと

 事業承継時の経営者保証の取り扱いについては、原則二重徴求は禁止です。 例外的に二重徴求が必要な場合には、その理由や保証が提供されない場合の融資条件等について、前経営者、後継者の双方に十分説明し、理解を得ることとしています。

 また、既に二重徴求となっている場合には、安易に二重徴求が継続しないよう、適切に管理・見直しを行うことも金融機関に求めています。

 

ー例外的に二重徴求が必要な場合とは 

・前経営者が死亡し、その保証解除が予定されている中で、相続確定までの間、一時的に後継者からの保証と重なり二重徴求となる場合。

・前経営者が経営権・支配権を有しなくなり、後継者に経営者保証を求めることが止むを得ないと判断された際、後継者が前経営者の保証を解除しないことを求めている場合。(法人から前経営者に対する多額の貸付金等の債権が残存しており、当該債権が返済されない場合には法人の債務返済能力に著しく損害を与えるなど、前経営者の保証解除が公平性を欠くという理由から)

 

後継者への経営者保証の引き継ぎを慎重に判断すること

 後継者に対し経営者保証を引き継がせることは、事業承継の阻害要因になることから、当然に引き継がせるのではなく、金融機関は必要な情報開示を受け、保証契約の必要性を改めて検討することとしています。事業承継に与える影響も十分に考慮して慎重に判断することが求められます。

 後継者にやむを得ず、経営者保証を求める際には、適切な保証金額の設定や、代替的な融資方法の活用等の検討を求めています。

 また、事業承継の段階において、一定の要件を満たす中小企業については、その経営者を含めて保証人の徴求をしない信用保証制度 (事業承継特別保証制度 )の活用をすすめています。

※事業承継特別保証制度の詳細は下記へ

 

前経営者との保証契約の適切な見直し

 中小企業の事業承継にあたって、既存の経営者保証契約の適切な見直しの検討を求めています。

 前経営者が、実質的な経営権・支配権を保有しているといった特別の事情がない限り、第三者に該当する可能性があることからです。

 令和2年4月1日から の改正民法の施行により、第三者保証の利用が制限されることや、金融機関においては、経営者以外の第三者保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立が求められていることを踏まえて、保証契約の適切な見直しを検討することが求められています。

 

 

【対象者】

 主たる対象は中小企業・小規模事業者、個人事業主の経営者や後継者です。

 反社会的勢力ではなく、そのおそれもないことが必須となります。

 

 

【中小企業・経営者の要件】

 こちらは本体と同様、以下の要件を満たす経営状態を、将来に亘って充足することが必要となります。

①資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されていること

②財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能であること

③金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されていること

※詳しくは前回の記事をご覧ください。

 

 

 ここで少し先ほどの、事業承継特別保証制度とは何か、を説明しておきます。

 

事業承継特別保証制度とは ー

 2020年4月に開始され、事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証制度です。同時に経営者保証の解除を支援するための制度でもあります。

 全国信用保証協会連合会は、中小企業・小規模事業者を対象に、事業承継を支援するさまざまな保証制度を用意しています。その中の1つが事業承継特別保証制度です。

 この他にも、中小企業者が経営の承継のために必要な資金に利用できる保証制度(経営承継関連保証)やM&Aによる事業承継に必要な資金に利用できる保証制度(経営承継準備関連保証)等があります。

※詳しくは全国信用保証協会連合会のページ

 

活用のメリット

・事業承継時の経営者保証が要らない

・経営者保証ありの既存の借入金についても借換により経営者保証を不要にすることが可能

・経営者保証コーディネーターによる確認を受けた場合には、保証料率が大幅に軽減される(保証料率については、経営者保証コーディネーターによる確認を受けない場合の保証料率は0.45%~1.90%ですが、確認を受けた場合は0.20%~1.15%の保証料率となります。)

※経営者保証コーディネーターとは、各都道府県の産業振興センターなどに配置されている、事業承継特別保証制度など経営者保証支援の専門家であり、経営者保証解除のための中小企業の支援などを行う人のことです。財務責任者の経験がある人や、公認会計士、税理士などが担当しています。保証料率の引き下げは経営者保証コーディネーターが判断しますので、大変重要な役割を担っています。

 

要件

 事業承継特別保証制度を利用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

・中小企業・小規模企業であること

・事業承継計画書を作成していること

・資産超過であること
・EBITDA有利子負債倍率が10倍以内であること
・法人と経営者個人の分離がなされていること
・返済緩和(リスケ)中ではないこと

 上記の要件に加えて、下記のいずれかに該当する中小企業者のみが事業承継特別保証制度を利用することが可能です。

・事業承継計画書を策定していて、3年以内に事業承継を予定する法人
・2020年1月1日から2025年3月31日までに事業承継を実施した法人で、事業承継日から3年を経過していないこと

※EBITDA有利子負債倍率とは、実質的な借入金をキャッシュフローにより何年で返済できるのかを表す指標のことで、(借入金・社債-現預金) ÷(営業利益+減価償却費)で算出される。

 

保証限度額

 保証限度額は2億8000万円で、対象となる資金は事業資金です。

 また、保証期間については、一括返済の場合は1年以内での返済となりますが、分割返済の場合は10年以内(据置期間)

 

 

【まとめ】

 「経営者保証に関するガイドライン」の特則は、中小企業が経営者保証により事業承継を断念しなくてよいよう、課題を明らかにし解消するために金融機関と中小企業、その関係者で努めていく基本方針です。

 本体に付随していますので、中小企業の経営者にとってはリスクを軽減できる可能性を含み、尚且つ事業承継時は効果的なガイドラインとなります。

 事業承継を検討しているが、経営者保証により躊躇されていた方は是非、ご相談下さい。

 

 本日もお付き合いありがとうございました。

 

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