事業承継税制の「一般措置」と「特例措置」とは
こんにちは。
大阪事業承継パートナーズ コンサルタントの岡本です。
前回、経営承継円滑化法の事業承継税制についてお話しさせていただきました。その中で、「一般措置」と「特例措置」という言葉が出てきたと思います。
本日はこちらの違いについてお話ししていこうと思います。
事業承継税制の概要はこちら
事業承継税制の要件はこちら
【はじめに】
事業承継税制とは、後継者が、非上場の自社株式等を先代経営者から相続や贈与により取得した場合、相続税・贈与税の納税が猶予・免除される特例制度です。
国がこのような法律を策定した背景には、事業承継において、納税の負担から後継者が承継を断念したり、会社を引き継いだとしても納税のために事業を続けていく資源を手放す、会社の運転資金を納税に当てるなど、会社の安定的な経営に影を落としてしまうことが考えられるからです。
承継を断念し、会社が倒産した場合、従業員も働き口をなくしてしまいます。素晴らしい技術を持った中小企業も多いことから、日本の技術・雇用を守るという意味で国も事業承継に力を入れているのです。
経営承継円滑化法の1つの柱、事業承継税制は後継者をはじめ、会社の存続に大変有効な法律となっています。
【事業承継税制の2つの制度】
事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の2つの制度が設けられています。
「特例措置」には特例承継計画の策定や適用期限が決められていますが、「一般措置」よりも手厚い内容となっています。
手続き等、少々難しい面もありますが、要件が当てはまるようでしたら「特例措置」の活用をお勧めいたします。
【「一般措置」と「特例措置」の比較】
出典:中小企業庁
表で比較しても分かるように、「特例措置」のほうが手厚い内容になっていますね。
会社の経済面として、特に有益なのは対象株数と納税猶予割合でしょう。
対象株数は「一般措置」が3分の2であるのに対して、「特例措置」は全株式に適応できます。また、納税猶予割合も「特例措置」ですと、贈与・相続共に100%となります。
後継者に株式を承継させる際、株式評価額が高い場合はこの差がとても大きいものになる可能性があります。
次に、承継パターンですが、「特例措置」は、後継者を3人まで選任し活用できます。1人に絞らなくてもよいため、後継者を決めかねている際や、途中で後継者が引き継げなくなるという不測の事態にも対応でき、リスクを回避しながら会社の可能性を広げます。
「一般措置」「特例措置」ともに、親族外承継でも活用可能です。
雇用確保要件の弾力化とは:
特例措置の認定を受けた場合は、雇用が8割を下回った場合でも認定取消・納税とはなりませんが、その理由について都道府県に報告を行わなければなりません。その報告に際し、認定経営革新等支援機関が、雇用が減少した理由について所見を記載するとともに、中小企業者が申告した雇用減少の理由が、経営悪化あるいは正当ではない理由によるものの場合は、経営の改善のための指導及び助言を行う必要があります。(中小企業庁・パンフレットより)
【一般措置】
①一般措置の制度
<贈与税の納税猶予・免除制度>
出典:中小企業庁
贈与前から後継者が既に保有していた株式等を含めて、当該中小企業の株式等の総数の3分の2を上限とし、後継者が贈与により取得した株式等(ただし、議決権を行使することができない株式を除く) に係る贈与税の100%が猶予されます。
<相続税の納税猶予・免除制度>
出典:中小企業庁
相続前から後継者が既に保有していた株式等を含めて、当該中小企業の株式等の総数の3分の2を上限とし、後継者が相続又は遺贈により取得した株式等(ただし、議決権を行使することができない株式を除く)に係る相続税の80%が猶予されます。
②一般措置を受けるには
□事業承継税制の要件を満たしていること。
□都道府県庁の認定を受けること。
□税務署に贈与税・相続税の申告書を提出すること。(認定書等の添付が必要)
□報告期間中(原則として贈与税・相続税の申告期限から5年間)は雇用確保等の要件を満たす必要があること。
贈与税の申告期限:贈与年の10月15日から翌年1月15日までの間に申請
相続税の申告期限:相続発生後5か月を経過する日の翌日から8か月を経過する日までの間に申請
□後継者が対象株式等を継続保有すること。
ー5年間ー
□都道府県庁へ「年次報告書」を提出する。(年1回)
□税務署へ「継続届出書」(年次報告の確認書等の添付が必要)を提出する。(年1回)
ー5年後ー
□税務署へ「継続届出書」を提出する。(3年に1回)
【特例措置】
①特例措置の制度
<贈与税の納税猶予・免除制度>
出典:中小企業庁
後継者が贈与により取得した株式等(ただし、議決権を行使することができない株式を除く)に係る贈与税の100%が猶予されます。
<相続税の納税猶予・免除制度>
出典:中小企業庁
後継者が相続又は遺贈(死因贈与を含む)により取得した株式等(ただし、議決権を行使することができない株式を除く)に係る相続税の100%が猶予されます。
②特例措置を受けるには
□事業承継税制の要件を満たしていること。
□特例承継計画の策定をすること。
会社が作成し、認定経営革新等支援機関 (商工会、商工会議所、金融機関、税理士 等)が所見を記載する。
□都道府県知事の認定を受けること。
※特例承継計画書を添付し、2024年3月31日までに提出
※2026年3月31日までに延長されています。
□税務署に贈与税・相続税の申告書を提出すること。(認定書等の添付が必要)
□報告期間中(原則として贈与税・相続税の申告期限から5年間)は代表者として経営を行う等の要件を満たすこと。申告期限は一般措置と同じ。
□後継者が対象株式等を継続保有すること。
ー5年間ー
□都道府県庁へ「年次報告書」を提出する。(年1回)
□税務署へ「継続届出書」(年次報告の確認書等の添付が必要)を提出する。(年1回)
ー5年経過後ー
□都道府県庁と税務署へ実績報告書を提出する。
ー5年後ー
□税務署へ「継続届出書」を提出する。(3年に1回)
※報告期間中に満たさなければならない要件は一般措置と特例措置では違ってきます。かなり細かな要件がありますので、専門家と共に確認をお勧めいたします。
報告期間中に満たすべき要件の一例
・後継者が会社の代表者であること
・従業員数の8割以上を5年間平均で維持すること(特例措置の場合は弾力性あり)
・後継者が同族内で筆頭株主であること
・上場会社、風俗営業会社に該当しないこと
・資産保有型会社等に該当しないこと 等です。
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【特例措置を活用する際の注意点】
①特例承継計画を策定すること。
特例承継計画とは:特例承継計画には、後継者の氏名や事業承継の予定時期、承継時までの経営見通しや承継後5 年間の事業計画等を記載し、その内容について認定経営革新等支援機関(※)による指導及び助 言を受ける必要があります。
(※)認定経営革新等支援機関とは、中小企業が安心して経営相談等が受けられるために専門知 識や実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定する公的な支援機関です。具体的には、商工 会や商工会議所などの中小企業支援者のほか、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等が主な 認定経営革新等支援機関として認定されています。(中小企業庁・パンフレットより)
②都道府県庁の認定に期限があること。
期限は2024年3月31日までです。
※2026年3月31日までに延長されています。
③適用期限があること
前回の記事でも記載していますが、特例措置には「10年以内の贈与・相続」という適用期限があります。
その期限は、2018年1月1日から2027年12月31日までとなっています。
事業承継税制を活用する際、満たさなければならない要件の1つに「後継者は役員就任後、3年経過している」という項目があります。適用期限を考慮すると、どんなに遅くても2024年末までには役員に就任していなければ特例措置は活用できません。
見落とされがちですのでご注意ください。
【まとめ】
今回は事業承継税制の2つの制度、「一般措置」と「特例措置」について、相違点やそれぞれの要件をお話ししました。
「一般措置」も「特例措置」も、贈与税及び相続税の納税猶予制度を組み合わせて活用することで税負担軽減され、円滑な事業承継が行えます。しかし、細かな規定もあり、事業承継税制を活用するにあたって少々ハードルが高いと感じてしまうかも知れません。
実際活用する際は、やはり専門家と共に進めることが安心かつ確実だといえます。
しかし、ご自身の会社が活用可能なのか、およその見当はつけれるかと思います。まずは、前回の記事の事業承継税制の要件を満たしているかをご確認ください。その後、「特例措置」の要件を満たせるのかの確認に入りましょう。
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